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経済安全保障上の機密情報へのアクセスを官民の有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の創設に向け、政府の有識者会議が提言をまとめた。
対象を政府保有情報に限定し、それを扱う必要のある政府職員や民間人への身辺調査を政府が一元的に行った上で、資格付与を判断することなどが柱だ。調査は本人同意を大前提とした。
妥当な提言である。政府はこれを踏まえて1月26日に開会する通常国会での法制化を目指す。官民で機密情報を共有し、活用するための手段として、実効性の高い制度設計を求めたい。
同様の制度は特定秘密保護法にもある。だが、対象分野は防衛と外交、スパイ活動やテロリズムの防止に限られ、経済安保上の情報を必ずしもカバーできるわけではない。この点で日本は、既に制度を整えている米欧諸国に後れを取っている。
重要なのは、民間側に法整備を望む声が強いことだ。日本企業が米欧政府や研究機関との共同開発などに参入する上での隘路になっているためで、機密保全の信頼性を政府が保証する制度をつくる意義は大きい。
想定される機密情報は、重要物資のサプライチェーン(供給網)の脆弱性や経済安保上の規制、サイバー関連などだ。提言は対象情報の指定や解除を「柔軟かつ機動的」に行うよう求めており、法令や政令などできめ細かく対応する必要がある。
情報保全の信頼性を確認するために行う個人への調査については「特定秘密制度と差異を設ける理由はない」とした。その場合、テロ活動との関わりや犯歴、薬物乱用などが調査項目となるが、これをもって、プライバシーや人権の侵害を問題視するのは適切ではない。
機密を扱う以上、厳格な調査は当然だ。提言は本人同意を調査の前提とするだけでなく、同意拒否などを理由に組織内で不合理な配置転換などの不利益を受けないよう求めた。これを担保する実効性のある制度とすることこそが肝要だ。
機密漏洩への罰則では、機微度の高い情報について特定秘密保護法と「同様の水準」にすることなども提言している。同法の罰則は10年以下の懲役などだ。個人だけでなく組織に対する処罰規定も含めて漏洩には厳正に対処すべきである。
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2024年1月24日付産経新聞【主張】を転載しています